商標法と他の法律との関係
商標権は登録商標と同一の商標を指定商品(役務)について独占的に使用でき、他人が登録商標と同一または類似の商標を指定商品(役務)と同一または類似の商品(役務)に使用することを排斥できます。
しかし、憲法第29条第2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」と規定しており、商標権も財産権の一種であるためこの規定に従わなければなりません。
ここで、「法律」とは商標法だけではなく不正競争防止法(以下、「不競法」)など全ての法律が含まれ、法律全体で公共の福祉(全体の利益)が実現されるようにしなければなりません。
したがって、商標権さえ有していれば商標権者が好き勝手に権利行使できるというものではなく、適切な商標権の行使となるかについては、不競法等といった周辺の法律とのバランスが考慮されることとなります。
不競法との関係
不競法は第1条において、その目的を「この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止および不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定しています。
不競法は公正な競争秩序を形成して産業の発達に寄与することを目的としている点で商標法と共通していますが、商標法がある事業者に「商標権」という独占排他権を付与して競争秩序を形成するのに対し、不競法はある行為が当該法律に定める規定に該当するかを個別具体的に判断して、規定に該当する行為を不正競争として排除することによって競争秩序を形成します。すなわち、商標権のように権利を付与して権利者を保護するわけではありません。
商標権の行使であっても、それによって他社の営業上の利益を侵害するような場合は商標権の行使は認められません。
たとえば、NEO・GEO事件では、原告が「NEO・GEO」の登録商標を付したテレビゲーム機を販売しており(当該商標は周知)、被告が「ファイティングスティックNEO」の登録商標を取得し、その登録商標を付して原告テレビゲーム機の専用コントローラを販売していた事案において、かかる被告の行為は不正競争行為とされ1億円を超える損害賠償が命じられました。
独占禁止法との関係
独占禁止法(私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(以下、「独禁法」))は第1条において、その目的を「この法律は、私的独占、不当な取引制限および不公正な取引方法を禁止し、(中略)公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭および国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と規定しています。
商標法と独禁法は事業者に創意工夫を発揮させて産業発達を図るという点で共通していますが、その実現手段として商標法は商標権者に独占権を付与するのに対し、独禁法は特定の者の独占を禁止します。
そこで、前述した「公共の福祉」実現の観点から、独占の許容および禁止の範囲を調整しなければなりません。
したがって、独占禁止法第21条(「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」)の規定において、法律上は「権利の行使」とだけ規定されていますが、前述の観点から、これは「正当な権利の行使」と解釈すべきであり、これらの権利の正当な行使のみが独禁法の適用を除外されると考えるべきです。
以上より、たとえば、商標権者との契約において、小売価格や、小売販売地域および小売数量等を守る小売業者にしか商品を販売しないということを条件にするのは、商標権で価格や販売地域、数量を統制する行為であり、公正な競争を阻害するため、商標権の正当な行使とはいえず、独禁法による排除措置の対象となります。